血肉にする習慣③ 五十嵐大介「ウムヴェルト」

2019/7/9 火曜日

 

五十嵐大介 「ウムヴェルト」より

「魚」

 

自然と性が結びつく事を教えてくれたのは

この物語だったかもしれない

 

私はフロイトを知るずっと前から

生えている木々を

鹿の角を

やらしいものに感じていた

 

風が汗ばんだ私の身体と服の間を

通り抜けていく時

私は包まれ抱かれる感覚に陥る

そして、それはとても幸福で気持ちがいい

 

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この物語のタイトルは

「魚」

 

水に女が入ってはいけない日が

その山には存在した

 

ある女性は知らずに

その山の川に足を踏み入れた

 

水遊びをする彼女の足の間、股間の下を、

一匹、また一匹とすり抜けてつっついてくる

 

気づくと彼女を中心に魚は群がり

カエルは彼女の乳房に食いつく

 

彼女の身体の全ての穴に

魚たちが飛び込んで、交わり

 

山の精を一身に注ぎ込まれ

生まれた女性は

それは、それは、美しく怪奇な

マーメードであった

 

彼女の下半身は

いくつもの尾びれを持つ

 

「女は今も生きている」

 

これがこの物語の最後の言葉

 

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このお話を信じるという事は

毒の入った禁断の甘い果実を

頬張っているようなものかもしれない

それは、とても魅惑的。